🔮 AI時代のキャリア 8問
エンジニア不要論・差別化・これからの働き方
AIを職場で活かすアイデアが浮かびません。使いこなせる人との違いは何ですか?
AIという武器を手にしても、それを何に使えばいいのかアイデアが浮かびにくいという悩みです。使いこなせる人とそうでない人の違い、創造性を発揮するために必要なことについての質問です。
講師の答えは明快です。「アイデアを見つけるのがうまい人は、めんどくさいを見つけるのがうまい人」だといいます。毎日パソコンで当たり前のようにこなしている作業の中に、実は自動化できる「めんどくさいこと」が隠れているという発想です。
アイデアを見つけるコツは、普段の自分の気質を一旦忘れて、超神経質な人間になりきることです。無駄な動きが大嫌いで、面倒なことは絶対にしたくないという前提に立ってみると、何が面倒に感じられるかが見えてきます。すべての職場において、AIを活用して自動化できる余地は無限にあるはずで、今の会社・業界・仕組みがすべて完璧ということはあり得ません。アイデアが浮かばなくなるのは、今のやり方が「当たり前で動かしようのないもの」だと思い込んでしまっているからだと講師は指摘します。
大きな会社に所属していて権限がなく、大きなシステムを自分では動かせないという事情もあるでしょう。それは仕方のないことであり、その分大きな予算や大きな仕事に携われるというメリットもあります。そうした環境では、まず個人のプロジェクトとして小さく取り組み、「こんなことができますよ」というサンプルを見せることで決裁者の心を動かし、仕組みそのものを変えられるように働きかけていくのがよい方法です。
毎日のルーティンに慣れきってしまうと、「面倒くさい」という感情自体が麻痺してしまいます。それでも、実際に「こうできたら便利ではないか」というものを見せれば、周囲は「それがあったらすごくいいね」と反応するはずだと講師は語っています。
Asanaのようなプロジェクト管理ツールですでに90点が出せているのに、自分専用のダッシュボードで100点を目指す理由がわかりません。既存サービスを使い続けたほうが効率的ではないでしょうか?
「4つのペイン」構成の自分専用ツール(採用管理ツールなど、講義のワークで題材にしたもの)を作る意義について、既にAsanaやLinearのような優れた汎用ツールがあるのに自作にこだわる理由が分からない、という質問がありました。
結論として、「100点の領域は自分で作るしかない」としつつも、「すべてを自作すべきとは考えていない」と明言されました。実際に、タスク管理はLinear、コミュニケーションはSlack、業務基盤はGoogle Workspace、開発はCursorやClaude Codeといった既存ツールを日常的に使っており、Asana・Linear・Notionのような、巨額の資金で作り込まれたツールに真っ向勝負を挑んで上回るものを個人で自作するのは現実的ではないとされました。
一方で、汎用ツールがすべての仕事に完全に最適化されているわけではなく、「最適化されていると感じるのは、ただ慣れて習熟しているだけ」とも指摘されました。実例として、ドリルの問題を作る内製ツール「Quiz Studio」や、講義制作システム、動画制作を自動化するツールなどは、既存のツールでは代替できないと説明されました。
自分の仕事のどこで差別化したいか、どこに強みを発揮したいかは事業戦略に紐づく判断であり、「4ペインで自分専用ツールを作る」というテーマがすべての仕事に有効とは限りません。それでも、「もし全部自分で作るとしたらどうするか」を一度でも自分の手で作ってみた経験がある人だけが持てる選択肢がある、という点が強調されました。
自分の能力(提案力やコミュニケーション力など)を仕組みに落とし込めれば、手作業だけで対応するより多く・高品質な仕事ができるようになります。AI時代に開発のハードルが下がり続ける中で、汎用ツールだけを使うと決めてしまうことは、自分で判断して仕組み化にたどり着く力を育てにくくする、という考え方が示されました。
AIが実装だけでなく設計や運用にも踏み込み始めている中で、このスクールで学んでいる能力は将来どこまで人間に残ると考えていますか?エンジニアと非エンジニアを区別する点は何ですか?
Anthropic(Claude Codeを開発する会社)の動向を見ると、AIが実装だけでなく設計・運用にまで踏み込み始めており、エンジニアと非エンジニアの境界が薄くなってきているように感じる。将来的にどこで差別化や価値の源泉が生まれるのか、という質問がありました。
「境界が薄くなっている」という認識には賛成としつつ、「エンジニアが不要になる」という考えは明確に否定されました。AI時代の開発手法に適応できていないエンジニアが淘汰される一方、エンジニアという職能自体の価値はむしろ高まっていくと説明されました。
例として、HTML/CSSでWebページを組む「コーダー」や「マークアップエンジニア」と呼ばれる仕事は、AIが自動でできるようになったことで市場価値がほぼ失われた実例が紹介されました。一方で、14歳からコーディングを続けてきた友人は、今は手でコードを書くことはなくなったものの、Next.js(Webアプリを作るための開発の枠組み)を含むフロントエンド開発全体の専門家として市場価値を高め続けているといいます。時代の変化に合わせて学び続けたかどうかが分かれ目だとされました。
「エンジニア不要論」はこれまでも4〜5回繰り返されてきましたが、実際にAI時代の新しい開発の仕方に適応したエンジニアの価値は下がるどころか上がっていると断言されました。むしろ、旧来の細かい文法理解が必須だった時代と違い、AIを使えば文法を知らなくても開発を始められるようになったことで、経験の少ない人にもベテランに追いつくチャンスが生まれているとポジティブに位置づけられました(実際に新人メンバーにClaude Codeでゼロから開発をしてもらい、その活躍に驚いたというエピソードも紹介されました)。
重要なのは、「プログラミングの文法を知っている」という価値はなくなったが、「テクノロジーがどう動いているかという原理を理解している」という価値はなくならないという点です。物事の原理を理解している人だけが新しい価値を生み出せるとし、AIやソフトウェアの活用を、自分の知識・経験・アイデア・クリエイティビティに掛け算するものとして捉えることがすすめられました。
教育事業以外でAIの波を掛け合わせた新事業を立ち上げるとしたら、どのような領域・マネタイズモデルを構想しますか?
AI活用アドバイザーとして活動する受講生から、AIツール開発や企業の課題解決といったAI人材スキルは再現性が高くコモディティ化(誰でも提供できる一般的な商品・サービスになってしまうこと)しやすいと感じており、これからはクライアントの真の課題を発見する力や、代えのきかない属人性が最大の差別化要因になるのではという意見とともに、教育事業以外でAIの波を掛け合わせた新事業を立ち上げるとしたらどんな構想を持つか、という質問がありました。
「課題発見力や属人性が差別化要因になる」という考えには100%賛成としつつ、これはAI時代特有の話ではなく、ビジネス書『イシューからはじめよ』が語るように、数十年以上前からずっと変わらず大切にされてきた普遍的な考え方だと指摘されました。
その上で、「Claudeを企業に導入する」といったパッケージ型の商売は再現性が高くコモディティ化しやすいが、価値ある課題発見には「課題を解決する具体策とセット」であることが不可欠だと説明されました。『イシューからはじめよ』が挙げる良い課題(イシュー)の3条件、「本質的であること」「非常識であること」「答えが解けること」を踏まえ、課題を見つけられても、それをどう解決できるかまでセットでなければ価値ある課題発見にはならないとされました。
自身が教育事業以外で長期的に挑戦しているのは、AIを使ってクリエイティブなコンテンツを生み出すこと(例
)であると紹介されました。まだ挑戦の途中であり、確立した正解があるわけではないとしつつ、「なぜこれはAIでできないのだろうか」という問いをすべての領域に対して持ち続けることが、新しい時代のチャンスをつかむ鍵になる、というスタンスが示されました。AIで何かを形にする力はついてきましたが、本当に取り組むべき課題の解像度をまだ高く見つけられていません。AIとの対話やgrill-me、スキル化以外に、課題を見つける方法はありますか。
結論として、講義で伝えられることは限界まで詰め込んで伝えており、「実は他にも伝えていない方法がある」ということはないと明言されています。AI-Driven Schoolで身につけてきたテクノロジーの知識やAIのリテラシーは、これからの時代において間違いなく役立つと断言できる一方で、これは「絶対に成功する方法」でも「誰でも大儲けできる方法」でも「出世が確定する方法論」でもありません。どんなにスキルや教養があっても、今どんな環境で働いているか、どんな役職で、周囲とどんな人間関係を築き、日々どんな働きかけをしているかという掛け算が成功には関わってきます。新しいことに挑戦させてもらえない職場環境にいる場合、どんなにツールを作れる力があっても、それを仕事に活かすのは難しいと注意が促されています。
画期的なアイデアは、ポンポン生まれるものではなく、半年・1年かかることも珍しくないといいます。講師自身、現在エネルギーを注いでいる「AI時代の動画編集ツール」の構想にたどり着くまでには長い時間がかかり、半年前にはその完成イメージすら持てていなかったと明かしています。もっと簡単なツールから始まり、それを進化させていく過程で、自分が何をしたいのか、どんな問題解決が今の時代でベストなのかが見えてきたということです。
本当に取り組むべき課題を見極める最善の方法は、講義で繰り返し伝えられている「めんどくさいを見つけること」です。そのためには、自分が日々無意識にやっていることを言語化し、無意識を意識化すること、つまりアンラーニング(これまでの思い込みや当たり前だと思っている前提を、意識的に手放して問い直すこと)が最も有効な方法だとされています。
作ったツールを自分用から社内、さらにお客様への提供へと広げるとき、どこまで公開してよいかの判断基準を教えてください。
ツールの公開には「1. 自分で使う」「2. 社内やチームメンバーで使う」「3. お客様に使ってもらう」という段階があり、特に機能価値とセキュリティの面で2から3へのハードルが大きいのは、その通りだと認められています。
大前提として、AI-Driven Schoolは「誰もが商用レベルのプロダクトを作れる状態」を目指すカリキュラムではありません。そこまでを目指すとなると、これまでの講義の難易度を1とすると、考えなければいけないことが10倍ほど増えてしまうといいます。「どこまで作り込んだらお客様に提供していいのか」という問い自体を、そのままAIに聞いてみることが勧められています。
商用として提供する際に考えるべき観点としては、入念なテスト、セキュリティ、利用者が増えたときのスケーラビリティ(利用規模が大きくなっても仕組みが耐えられるかという観点)、サーバー費用、そもそものビジネスモデル、などが挙げられます。商用化はとても大変な作業ですが、プログラミングが民主化された今、個人でも商用レベルのサービスを作り上げることは、昔に比べてはるかに簡単になったといいます。商用レベルのプロダクトを目指して公開まで持っていく人が1人でも多く増えてほしい、という期待も述べられています。
ただし、いきなり商用化を目指すのは難易度が高く、生成AI時代だからこその新しい付加価値のある体験を構想する必要がある、という注意も添えられています。
フィジカルAIが最近注目されていますが、これについてどう考えていますか。
結論として、フィジカルAIには非常に注目しているといいます。フィジカルAIとは、物理的な能力を持ったAIのことです。「ロボット」と呼ぶと、人間があらかじめプログラムした機械仕掛けというイメージが強くなるため、それと区別してこう呼ばれています。ソフトウェアだけの市場よりも、この世界は物理的なもので成り立っている部分が大きいため、フィジカルAIの市場規模は圧倒的に大きいと指摘されています。
仮に受講生がフィジカルAI分野、つまりAIで動く物理的なプロダクトに取り組むことになったとしても、AI-Driven Schoolで学んだ知識・教養は間違いなく役立つとされています。その理由は、結局のところソフトウェアエンジニアリングの話に行き着くからです。ハードウェアの分野には、ハードウェア特有の考えるべきことがたくさんありますが、それを制御するのはAIでありソフトウェアです。高性能なロボットは、ハーネスエンジニアリング(AIを制御する仕組み全体を組み立てる作業)の極致ともいえるものであり、AI-Driven Schoolで学んだことは、これから間違いなく世界を大きく変える波になるであろうフィジカルAIにも通じている、とまとめられています。
最新モデルを使って試しにツールを作ったら、時間をかけて自作したものよりはるかに良いものができてしまいました。AI-Driven Schoolを受講した人間と受講していない人間の差はどこに現れますか。
結論として、講義で学んできたことは全く無駄にならず、むしろめちゃくちゃ役立つと確信していると答えています。AI-Driven Schoolで伝えている難しい内容は、AI時代以前に学ばなければならなかったことの量を10とすると、1程度にまで絞り込んだものだといいます。例えとして、小学校で習った筆算や中学校で覚えた元素記号を、今の生活で直接使う機会はほとんどないけれど、そうした基礎的な学問は日々の生活の土台としてとてつもなく役立っている、という感覚が挙げられています。学ばない方がよかったという考え方も一つの立場として尊重するとしつつ、講師自身はそれとは違う立場を取っており、義務教育で学ぶような基礎的な学問は毎日の生活に確実に役立っていると考えている、と明言しています。
スクールを設計する際に決めていたのは、本当に必要な知識だけに絞り込むことでした。プログラミングスクールで教えるような、AIに任せておけばよい細かい概念はすべてカットしてあり、AI時代に本当に必要な知識だけに絞ったカリキュラムになっているといいます。ただし、6ヶ月分の内容すべてを丸暗記して完璧に使いこなせるようになるのは難しく、どこまで身につくかは、どんなゴールを目指すか、どれだけ時間を投下するか、どれだけ主体的に自分のツール開発に取り組むかによって変わる、とも付け加えています。ソフトウェア開発が民主化し、細かい概念をすべて理解する必要がなくなったことには100%賛成しつつも、ブラウザ・サーバー・プログラム・データベースが何かもわからないままAIに全部作ってもらうのは、かえって難しいと指摘しています。
歴史をふり返ると、新しい技術が登場するたびに「もう学ばなくていい」という極論が繰り返されてきたと指摘されています。例えば表計算ソフトのExcelが登場したとき、会計士は全員失業すると言われましたが、実際には会計士は増えました。手計算という作業自体の価値はなくなっても、数字を解釈するという価値が残ったからです。同じように、自動翻訳が普及しても英会話の価値はなくなっていません。英会話は単なる文法や発音の習得ではなく、異国の文化やノリを理解する要素が大きなウェイトを占めているためで、簡単な意思疎通が翻訳AIでできるようになったからこそ、より付加価値のあるコミュニケーションとは何かへと戦場が移った、と説明されています。
AIが一瞬ですごいツールを作ってくれたと感じたときほど、本当にそうなのか冷静に考え直すべきだといいます。講師自身、過去に新しい技術に触れて「もうこれでいいじゃん」と感じた経験は何度もありますが、冷静に考え直すとそうでもないと感じることが9割だったと振り返っています。新しい技術は過大評価してしまいがちだ、という注意です。
最後に、受講した人間と受講していない人間の差の土台は、その人自身の人間力(毎日の生活習慣、コミュニケーションの仕方、仕事への取り組み方)にあると明言されています。どんなにスキルと教養を身につけても、基礎的な人間力が高くなければ活躍することはできません。AI-Driven Schoolは人間性を磨く場ではなく、自分の人生をどうしたいのか、どんな問題解決をしたいのかを決めるのは自分自身だけだ、とまとめられています。